【トラ番25時】坂本の「必要な時間」 練習前の周到な準備

練習開始まで2時間以上も前、人影もほとんどない甲子園の外野芝生を一人黙々と走る姿があった。
ユニホームにも着替えず、黒いジャージー姿で汗を流すのは見慣れた光景。
ランニングの後はストレッチなどで体をほぐし、坂本は息をはずませながら引き揚げていった。
 甲子園に“出社”すると、いつも坂本が走っていた。今年から始めたのか聞いてみると、何年も前からの習慣だという。
芝生を踏みしめながら、バッテリーを組む投手や配球について考えを巡らせ、どこの筋肉が張っているのか、疲労が残っているのか、体とも会話するという。
「自分にとっては必要な時間」と冷静沈着に答えてくれた。 練習前の周到な準備をたたえても「プロはみんなやっていること」と誇る様子もない。
寡黙な扇の要がどこまでも頼もしく見えた。(山本直弘)