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 「なかなか普通の野球選手じゃ経験できないことをやってきたので、それは自分の財
産というか経験だと思います。これからも胸に刻んでいきたいです」

 記憶に新しいのは“代打の神様”として君臨した前年までの2年間。特に16年は66
試合に出場して打率・241、3本塁打、17打点と勝負強い打撃でチームを支えた。
つらく、苦しい日々を乗り越えて得た充実の日々。それだけではない。自身の活躍と同
じくらい、9歳下の後輩の大躍進も心に響いていた。

 09年、狩野は矢野の後継者として初の開幕スタメンを獲得した。同シーズンは自己
最多127試合に出場。正捕手の座をつかみかけたが、10年秋に椎間板ヘルニアを発
症。手術に踏み切ったものの、その後も再発を繰り返した。11年には外野手登録とな
り、翌12年には育成契約に。悔しさを募らせる中、同じく原口文仁捕手(25)も3
桁の背番号から再スタートしようとしていた。

 捕手としてプロの門をたたいた原口だが、狩野と同様に腰痛を患った。再発を繰り返
し、鳴尾浜で苦悩の毎日を送っていた。もうダメなのか…。そんな時、親身になって言
葉をかけたのが狩野だった。同じ境遇を味わい、懸命に再起を図ろうとする後輩が自身
と重なったのだろう。1軍の舞台を夢見て、2人で生きる道を探した。