横浜DeNAベイスターズ・高田繁が語る GM業の醍醐味(前編)

 高田GMは、ラミレス監督など一軍のスタッフに対し、戦術や選手起用について一切の口出しをしない。
一方で、ファームでは二軍スタッフと育成ミーティングを重ね、どの選手をイースタン・リーグで起用して育てるか、データを元に綿密に計画を立てている。
とにかく防御率や打率は関係なく、決められた投球回数や打席数など機会を与え、実戦のなかで鍛えていくという考えだ。
「仮に、高卒で非力な選手がいたとします。ボールは前に飛ばないし、練習についてくるのもやっと。ファームのコーチは『ダメだ』と言うけれど、『いいから使え』と言うこともあります。
わたしは、使えるか使えないかを判断するのではなく、まずはどのぐらい成長する余地があるのかを見たいし、そこをしっかりと考えないといけない。ですから、半ば強引にわたしの指示でやらせたこともありますし、それは少しずつですが実を結んでいます」

 こういったシステムのなかで成長していったのが、4年目となる外野手の関根大気だろう。
ドラフト5位の高卒ながら初年度はファームで積極的起用され台頭すると、現在はレギュラーをうかがう存在にまで成長した。
関根のルーキーイヤーのことで思い出されることがある。当時の中畑清監督が関根の野球センスに惚れ込み、シーズン中に「一軍に上げて欲しい」と申し出たが、高田GMはこれを拒否した。結局、関根が一軍デビューを果たしたのは、勝敗に関係ないシーズン終盤の試合だった。
「選手を一軍に上げるという判断をするのはわたしの権限です。いくら『監督があの選手を上げてくれ』と言っても、『まだ育成の途中だからダメだ』といって拒否することもあります。
一方で、一軍の選手をファームに落とすのは監督に任せています。
GMとして一軍がどういう野球をするかは完全に任せてはいますが、入れ替えで一軍に上げる選手を決めるときは、わたしに相談するということになっています」