皮膚に炎症が生じている時には、アレルギー性炎症の悪循環が起こって炎症という火事が広がっているわけですので、これを断ち切るには抗炎症作用と免疫抑制作用を備えた副腎皮質ステロイド薬の外用により早期に消火する必要があります。
これで火事による皮膚のダメージを最小限に食い止めることができます。
炎症が鎮まれば、当然、消火のための薬剤をずっと使用する必要はありません。
こんどは、バリア機能を強くして、刺激が加わっても跳ね返すように保湿剤外用を中心にしっとりした皮膚を保つスキンケアが大事です。
アトピー性皮膚炎は遺伝的な病気なので、何か1つ行えば治ってしまうという根本治療はありません。
しかし、遺伝的な病気だから一生治らないというのは大きな間違いです。
皮膚のバリア機能だけをとっても年齢とともに強くなっていきます。
アトピー性皮膚炎は年齢とともに自然によくなっていくのがむしろ特徴である病気です。
いつの時期に症状が目立たなくなるかということについては、個人差が大きく、学童期までに自然に落ち着く場合が多いのですが、一部の方は成人になったあとも症状が続くことがあります。
しかし、成人の方でも年齢とともに症状は軽くなっていきます。
ただし、よくなったといっても、刺激に敏感であるという素質はある程度残ります。
例えば洗剤荒れなどの手の湿疹は、ある閾値を超えれば誰にでも起こりえますが、アトピー性皮膚炎の素質をもった方ではこういった湿疹が起こりやすいということはあります。
したがって、大人になって手に湿疹が出やすいという方の多くは、小さい頃アトピー性皮膚炎があった方です。
いずれにしても、アトピー性皮膚炎は年齢とともに症状が自然に目立たなくなる病気であることは間違いありませんので、決して根本治療という甘言に惑わされず、また対症療法と卑下せずに適切な外用療法を中心とした治療を行って、ごく普通の生活を行っていくことが肝要です。