サムシング吉松
聲の形を二度見た
http://animestyle.jp/2016/10/24/10661/

最初の鑑賞で物語の流れは掴めていた。だから、二度目は演出、話の運び方、画作り等に注意して観た。
そうやって観て、バランスに気をつけて作られた作品である事が分かった。過剰にドラマチックにしない。必要以上に泣かせる事もしない。
繊細な手つきで丁寧にドラマを積み重ねている。
だからこそ、ラストが活きているし「映画」としてきれいにまとまっている。

バランスをとっているのは物語の構成、話の運び方だけではない。音響演出、カット割り、画作りに関してもそうだ。
様々なパートが同じ方向を向いて、ひとつのテイストを形作っている。
個々のカットの構図に関しては、世界の切り取り方で登場人物と登場人物の距離感を出している。
そのあたりも面白い。

作画に関しても見どころが多いが、「手話の部分だけが過剰に動く」ようなかたちになっていないところが凄い。
通常の芝居の一部として、なおかつしっかりと、登場人物が手話をやっている。
この作品は芝居が基本的に丁寧であり、動きをきっちりと設計しているから、手話の部分が浮いていないという事なのだろう。

他にも映像面で感心する点がいくつもあった。山田尚子監督の手腕だけでなく、京都アニメーションの総合力も素晴らしい。
演出家・山田尚子のファンとして、もう少し言わせてもらえば、僕は彼女に色んなタイプの作品を作ってもらいたいと思っていた。
その願いが『映画 聲の形』である程度叶った。次回作ではさらに違ったタイプの作品に挑んで欲しい。