創業の理念を引き継ぐ アイリスオーヤマが「同族経営」にこだわる理由
2018年2月13日 6時0分
http://news.livedoor.com/lite/topics_detail/14292271/

・アイリスオーヤマが同族経営にこだわる理由について社長が話している
・サラリーマン出身者は判断に時間を要するが、オーナーは株主なので早いそう
・創業の理念が引き継がれることが大事なので同族経営のほうがいいとした

アイリスオーヤマ、同族経営にこだわる理由
2018年2月13日 6時0分 東洋経済オンライン
http://toyokeizai.net/articles/-/208278

大山健太郎(おおやま けんたろう)/1945年、大阪府生まれ。19歳で父親が急逝し、1964年にプラスチック加工の大山ブロー工業所を継ぐ。以後53年間にわたり社長を務めてきた(撮影:梅谷秀司)

園芸商品やLED照明など幅広い種類の商品を製造・販売するアイリスオーヤマ。年間1000品目もの新商品を世に出す。創業家の大山健太郎社長(72)が今年7月に会長に退き、後任には長男の晃弘取締役(39)が就く。社長交代は53年ぶり。
なぜこのタイミングなのか。大山社長に聞いた。

創業の理念が継承されることが大事
──自身の著書には75歳で社長を退く方針を記していましたが、予定より2〜3年早い退任となります。

アイリスオーヤマの埼玉工場。衣装ケースの引き出しを本体にセットする作業も機械が行う。工場の省人化・機械化を進めている(撮影:風間仁一郎)

成長に向けた道筋が見えてきたことが大きい。国内は製造・販売の仕組みが確立し、組織もしっかりしてきた。海外も米国や中国を中心に積極投資を続けている。当社は今年創業60周年で、新社長は4月に40歳になる。切りがよく、いいタイミングだと判断した。

社内からは寂しいという声も聞かれたが、引退するわけではない。私自身は会長として、長期的視点に立った戦略の策定や、新事業の創出に専念していく。

──今回、後任に息子を据えた理由は何でしょうか。

彼は当社に入社して15年、海外の責任者としてやってきた。今後、海外での売り上げを伸ばすことを踏まえると、適任だと考えた。

ただ、正直に言うと20年前から息子を社長にしようと思っていた。サラリーマンの中から選ばれてきた人は、周りに配慮しすぎて判断に時間を要する。オーナーは株主でもあるので、判断を下すスピードも速い。

同族経営がネガティブに見られるのは情報をクローズドにするから。当社は社員に対して情報をオープンにしており、密室はいっさいない。大事なのは創業の理念が引き継がれること。そのためには同族経営のほうがいい。

アイリスオーヤマの大山社長は、「ユーザーイン」(生活者目線)を経営哲学に掲げる。利益を出すためには、ユーザーニーズに合った新商品を作り続けることが必要という考え方だ(撮影:梅谷秀司)

──現在は非上場ですが、今後、株式公開する可能性はありますか。

その必要はない。息子も上場はしないと言っている。

われわれは無借金で投資も自己資金で賄っている。知名度向上のために上場すると聞くこともあるが、当社は非上場ながら、地盤とする東北地方ではいちばんネームバリューがある(笑)。

上場すればインサイダーの問題も出てくる。社員に対しても口が開けない状況になってしまえば、情報共有ができなくなる。

ECの広がりは追い風だ
──53年間社長を務めてきた中で、重要視してきた経営指標は何ですか。

2つある。1つ目は売上高に占める新商品比率で50%以上を保つこと。当社では新商品を発売後3年以内の商品と定義している。ヒット商品にあぐらをかいていてはいけない。つねに変化に対応することが大事だ。

2つ目は経常利益率で10%を維持すること(2017年度は9.6%)。これはたくさん儲けたいという意味ではなく、工場などへの設備投資に回すためだ。10%を大幅に下回れば、迷わず商品を値上げする。

──2022年度にアイリスグループで売上高1兆円という目標を掲げました(2017年度は4200億円)。

商品面では数量が伸びている家電に力を入れていく。進出先の米国や中国などでも、どんどん需要を掘り起こしていきたい。

特に海外はEC(ネット通販)が中心になる。問屋やバイヤーという壁もなくなり、商品本位で勝負できる。当社には2万点の独自アイテムがあり、ECの広がりは追い風だ。1兆円は十分達成できる。