ハーツ(その2)
しっかりと根を張った大きな木の回りに8mmロープをダブルフィッシャーマンで結び、
それに通したザイルを八の字結びをして、二つのユマールの一方だけを交互にゆるめながら、安全を確保しながら降下した。
勾配が急になるにつれて、木の数は減っていき、ほぼ垂直になったときに、木は全くなくなって、下方の視界が開け、谷が見えた。
ザイルの長さが尽きたところで、オーバーハング、つまり、下から見たら岩が覆い被さっている状態になっていた。
引き返そうかとも思ったが、後3メートルくらいだし、トラバースすれば、オーバーハングを避けることはできる。
ユマールをザイルから外し、登攀器具の確保なしで降りるのを強行した。
その途中で岩が崩れ、地面に落下した。
骨折には至らなかったが、その衝撃で右足を挫いてしまった。
足を引きずれば、なんとか歩ける状態ではある。
下から上を見上げると、この谷底が見えなかった理由が分かった。
四方が崖に囲まれ、しかもどこでも途中で高い木が覆い茂っているので、どの方向にも尾根は見えない。
ということは尾根からはこの谷底が見えないというのは道理である。(続く)
【小説】スナック眞緒物語【けやき坂応援】
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
364名無しって、書けない?(東京都)
2019/06/09(日) 20:53:30.81ID:KF4GAw8V0■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています