スナック眞緒物語♯2(その6)
再び眞緒ママが口を挟む。
「『水戸黄門』でも同じように視点を切り換えることができるわ。
黄門様一味は民衆の反乱を抑え込むために幕府から派遣された隠密で、代官は隠密の工作によって悪人に仕立て上げられたといったように」
久美が返す。
「そう言えば、『失楽園』を読んだときにも同じようなこと思ったかな」
「やだー、久美、あんな時代遅れの不倫エロ小説なんて読んでいるの?」
「違う、違う、渡辺淳一のほうじゃなくミルトンのほうよ。
ミッション系の大学だったから課題図書だったの。
堕天使ルシファー、つまり、サタンが天国の神の軍団に戦いを挑む。高圧的な神がつくった悪の帝国に正義のルシファーが反乱を起こすという見方をいつの間にかあたしはしてた」(続く)