病院に運ばれた自殺志願者は、疾患を負った患者である以上、必ず治される運命にある。
決して安楽な死など与えてくれないのだ。
仮に治療が無事完了したとしても、酸素不足で脳細胞が一部破壊され、後遺症を背負う。
脳がひどく損傷した場合、植物人間になり、手足もろくに動かせない廃人生活が待っている。
そのとき、家族には1日あたりの医療器具を含めた多額の入院代が請求される。
これを1ヶ月あたりで計算すると、一般労働者ではとてもまかなうことができない金額になるのだ。
そういった悲劇が原因で、自殺者を殺してしまった家族もいるくらいだ。
生活も破綻させる自殺の現状。
人間の体はロボットのようにスイッチのOFFで機能の停止が不可能なのだ。
テレビゲームのように、何度も死んでやり直しというわけにはいかない。
生き物が何のために生まれてきたのか、分からないまま、今日も、動物を殺した肉を食べて人は生きている。
脳が進化し、思考し悩む能力を人類が手にしてから、かえって苦痛が増えてしまった。